【岐阜 個人専門】三品寛之税理士事務所

通信制大学院でも、研究はできる!―東亜大学大学院に入学して、日税研究賞を受賞するまで―

1.なぜ通信制大学院を選んだのか

税理士を目指し、大学院で法律、特に租税法を学ぶ際に、私が通信制大学院という選択肢を選んだ理由はただ一つ、とにかく時間がなかったからです。

仕事、家庭、勉強。私は、目の前のすべてに全力投球してしまう性格で、通学制の大学院では移動時間や拘束時間のために学業や家庭との両立は難しいと感じていました。
だからこそ、自分の生活スタイルに柔軟に対応できる「通信制」という形が最適だったのです。

もちろん、通信制ならではの課題もありましたが、それらの課題は、私にとってかえって良い刺激となり、結果的には良かったのかなと感じています。

2.大学院1年目――研究の芽生え

入学式の日、租税判例が整理された資料をいただきます。そこに、多数の源泉徴収関連の判例が記載されていたことがきっかけとなって、「源泉徴収制度」に興味を持ち、入学式の帰りの新幹線の中では、これを研究テーマにすることに決めていました。
ニュースや新聞記事などを通じて「人的役務」という分野に興味を持っていたことも、選択の後押しとなりました。

通常の修士課程は講義を受けて論文を書いて修了ですが、私は「論文執筆を通じて何かを探求したい、できることなら何か足跡を残したい」という気持ちが芽生えていました。
もともとの大学院入学の動機は不純だったかもしれませんが(笑)、この瞬間から、私の中で大学院の位置づけが変わっていったのです。

この大学院生活では、通信制ゆえの難しさも痛感しました。
田舎に住んでいると、資料収集は容易ではなく、図書館にも必要な資料は揃っていません。
そんな中でも、休日に外部公開されている大学の図書館に通ったり、日本税務研究センターや国立国会図書館のコピーサービスなども活用し、研究を前に進めていきました。

3.大学院2年目前半――試練と鍛錬

あるゼミに希望を出し、高名な教授の所属するゼミに配属されましたが、残念ながらその先生と直接お会いすることはできませんでした。
ゼミでは、東京でスクーリングの機会があり、研究の進捗を報告しますが、(ゼミによりますが)自主性に任される部分が大きく、放っておくと何も進みません。私は、積極的に先生方にメールを送ったり、スクーリングで相談を重ねたりして、研究を進めました。

ただし、参考文献を相当数読んで臨んでいたつもりが、論文の構成が政策論に偏っていたために、研究報告では厳しい指摘が続きました。
中間発表会では、他ゼミの先生方の前で発表する機会もありましたが、結果は、ダントツで最下位だったかもしれません。この時点でも、政策論に偏っていたと自覚しています。その帰りの新幹線では、何度も中間発表会での光景を思い返していました。「のぞみ」も「ひかり」も見えず、先生方のご指摘だけが耳に「こだま」していたような感覚でした(笑)。

しかし、これが転機となりました。
私は、危機感を強く感じた時にパフォーマンスが最大化するタイプの人間。言わば、夏休みの宿題を最終日に仕上げるタイプの人間です(笑)
この中間発表会での恥ずかしい体験が、私のモチベーションに火をつけてくれたのです。

「毎日たった1行でも論文を書く、または読む。」 1日でも手を止めてしまうと、次の日のスタートができなくなると思って、「どんなに疲れていてもほんの少しでも前進しよう」と、心に決めました。

4.大学院2年目後半――本当の勝負へ

いつしか目標は「修了」ではなく、「日税研究賞への投稿」に変わっていました。
修士論文のスケジュールと並行しながら、投稿論文の準備も進める必要があり、ドキドキの終盤戦が始まります。

かなり遅いペースではありますが、指導教官の支援のもと、論文の構成を再構築し、11月に入りようやく形が決まりました。
しかし、12月、思わぬ検討漏れに気づきます。解釈論で結論を締めくくる予定が、解釈論では解決困難な問題に気づき、立法論へと論旨を変更しました。ここから、怒涛の執筆が始まります。

このとき、論文執筆が忙しいにも関わらず、家族旅行の予定を入れてしまっていました。ただ、ちょうど東京を旅先に選んでいたので、子どもと一緒に日税研究賞授賞式会場予定のホテルを訪れ、「パパは半年後、ここに来るよ(※もし呼ばれなくても、勝手に行っていたと思います)」と宣言しました(笑)。

そして、年末年始、久しぶりの徹夜をしながら、論文のブラッシュアップをし、ようやく論文公聴会までたどり着くことができました。論文公聴会では、最終論文の執筆の参考になるようにと、録音を許可されておりました。当日の発表時には、緊張で聞き取れていなかったのですが、帰宅後、その録音を聞き返していると、とてもうれしいことに気づきます。私の発表を終えて休憩に入るタイミングで、中間発表会で一番厳しい指摘をされていた先生が、温かいコメントをくださっていたのです。そのことを後で知り、うれしくなりました。

5.大学院修了と日税研究賞受賞

修了式は、3月上旬に下関で行われました。しかし、食事会へ向かう他のゼミの同期を横目に、私は、修士論文を片手に電車に乗っていました。フグを食べるような余裕はありません。なぜなら、日税研究賞の投稿期限である3月末までに、8万字の論文を4万4千字に短縮する苦行が待ち受けていたからです。その作業は困難を極めましたが、家族がテレビで見たことをそっと教えてくれました。「良い文章を書くコツは、たくさんの文章を書いて、その中から必要な部分だけ抽出し、磨き上げること」 そのときの私にぴったりの言葉だったかもしれません。

締切は、仮修士論文、本修士論文、最終論文に続いて、これで4回目――「締め切り効果の恩恵」でしょうか。最後の仕上げは集中力が高まり、論文の完成度が増したような気がしています。かくして、郵送で投稿論文を提出した瞬間に、ようやく本当の大学院生活が幕を閉じました。

そして、待ちに待った受賞通知。
それは、お会いすることのできなかったある方に宛てた、私の想いへの「返信」のような感覚でした。心の底から、うれしかった瞬間です。

6.通信制大学院の魅力

通信制の最大の魅力は、「自分のペースで学べること」
どのように研究をするか、学ぶかを自分で考えることができるため、主体的に探究することができました。

半面、通信制には制限はあります。指導や交流の機会は限られます。管理されることもありません。参考文献の収集も困難です。
だからこそ、自分で計画を立て、少しでも前進し、限られた機会にその成果を先生方にぶつけることが必要だと思います。私には、そのスタイルが、合っていたのだと思います。

制限があるからこそ、可能性を広げられる。
これは、子供のころにレゴで遊んでいた記憶にも通じます。「限られたパーツから生み出される創造性」制約があるからこそ、創造力が刺激され、夢中になれると、私は考えています。

私は、人の通った道を避ける傾向があります。通学制の大学院に行ったり、税理士専門学校に通ったりすれば、もっと気楽に過ごせたかもしれません。これに限らず、私は、いつも王道ではなく、いばらの道を歩んで、もがき苦しんできたような気がします。また、今もいばらの道を選んで、もがき苦しんでおります。

ただ、私は、それもまた楽しく感じる性格のようです。

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